「玉碗記」表紙絵
- シルクロード
- 平山 郁夫
- 不明
- 紙本彩色
- 24.2×27.4cm
井上靖の短編小説「玉碗記」(1951年発表)を所収した短編集『ある偽作家の生涯』の表紙となった原画作品。砂漠の地平線にラクダの隊商がシルエットで浮かび上がり、手前にはササン朝ペルシアで作られた透明なガラスの円形切子碗(玉碗)が描かれている。正倉院御物として名高い円形切子碗は、シルクロードを通ってペルシアから中央アジア、中国、そして日本へも運ばれた当時人気の交易品だった。本作はタイトルも制作年も残っていないが、おそらく短編集に所収された「玉碗記」のために描かれたものと推測される。短編「玉碗記」には、正倉院御物の「白瑠璃碗(円形切子碗)」と安閑天皇陵から出土した同タイプの切子碗の数奇な運命が扱われている。「玉碗記」は、1951(昭和26)年に発表され、文庫本の初版は1956(昭和31)年だが、1981(昭和56)年に文庫版の表紙が新装された際に、本作が表紙に使用されているため、おそらく絵の制作時期もその頃と考えられる。