平山郁夫絵画作品
自伝・デッサン・その他

法隆寺金堂壁画六号壁観音

  • その他
  • 平山 郁夫
  • 1991
  • 紙本彩色(素描)
  • 31.5×24.0cm

法隆寺金堂壁画

トルコでの模写の仕事を終えて帰国した翌年から、法隆寺の金堂壁画の再現模写の仕事に参加した。前田青邨先生の指示で、第三号壁「観音菩薩像」を単独で手がけることになり、板橋区成増の自宅で一人で仕事を進めることになったのだ。三号壁の「観音菩薩像」は戦前の写真しか参考になる資料は残っておらず、その剥落ぶりは想像した以上だった。神経を使い、一日みっちりやっても十センチ四方ができるかどうかという遅々とした進み具合だ。寝ても覚めてもまぶたの裏に壁のシミがちらつき、期日が追ってくると食事をする間ももったいなくて、おにぎりをほおばりながら描いた。描いているうちに模写する前には気づかなかった古代の美の仕掛けがだんだん見えてきて、ひきずりこまれていった。