瀬戸田町向上寺三重塔 大三島を望む
- その他
- 平山 郁夫
- 1991
- 紙本彩色(素描)
- 31.5×24.0cm
島の歴史
生口島の南西にある観音山は、子供のころ「火の滝山」と呼んでいた。おそらくその昔には、航行の目印となるように山の頂からのろしを上げたのだろう。それがあたかも滝が流れ落ちるように見えたので、こんな呼び名がついたのかもしれない。浄土宗を開いた法然上人が、讃岐に流された際に立ち寄ったという言い伝えもある。父の知り合いが、畑で鎌倉時代の銅鏡の残缺を掘り当てたこともある。島の北西、瀬戸田港を見下ろす潮音山の中腹に建つ向上寺の三重の塔は、室町時代の永享四年(一四三二)の創建という。「逆蓮華」と呼ばれる、ハスの花をひっくり返した独特の装飾が施されるなど様式上の特色がさまざまあり、国宝に指定されている。これらのことを考え合わせると、島の町としてはずいぶん早くから開けていたのではないかと思われるのだ。