平山郁夫絵画作品
自伝・デッサン・その他

薬師寺玄奘三蔵院

  • その他
  • 平山 郁夫
  • 1991
  • 紙本彩色(素描)
  • 31.5×24.0cm

薬師寺玄奘三蔵院

奈良の薬師寺に玄奘三蔵院が完成した。古刹薬師寺は法相宗に属する。法相宗の開祖が中国唐の僧玄奘三蔵である。玄奘三蔵は、仏法の真理を極めようと、はるばるインドまで旅をして、たくさんの経典を中国にもたらした高僧である。その旅の一端を「仏教伝来」という作品にまとめ、迷いから脱出でき、画家として生きる方向を見出した自分にとっても大の恩人である。  画業の総決算として、玄奘が十八年の歳月をかけて歩いた道を今に再現しようと、無謀にも思いたった。過去十年ほどの海外での取材は、実はこの壁画を描くためだった。玄奘が歩いた跡はくまなく辿ったつもりである。壁画は総延長で五十メートル近くになる。恐らく全部の仕事が終わるまでには精も根も尽き果ててしまうかも知れない。  しかしそれとて、玄奘が味わった旅の辛さに比べれば易いことなのだろうと思う。