八甲田山の残雪
- その他
- 平山 郁夫
- 1991
- 紙本彩色(素描)
- 31.5×24.0cm
原爆症
結婚、出産という人生の節目に立ち会い、絵の上でも転機にさしかかっていた。この頃から、激しい疲労を覚えるようになり、ある時ついに目の前が真っ暗になるという体験をした。医者は、白血球が常人の半分しかなく、きわめて危険な状態だという。原因ははっきりしていた。原爆被爆の後遺症が出たのだ。昭和三十四年の五月、恒例の東北写生旅行には学生を率いて参加した。十和田湖畔の和井内から奥入瀬を経て焼山に登り、さらに八甲田山まで北上して蔦温泉に下りるという行程だ。どうきやめまいに襲われながら、学生のあとについて行くのがやっとだった。